第一章 小夜啼鳥の恋は月下に散る

 
 
 時計の針が夜の八時を回った頃。
 夕餉を終えてくつろいでいたバイオレッタのもとに、サラが一枚の封筒を携えてやってきた。
「バイオレッタ様。お手紙が届いていますわ」
 筆頭侍女サラの言葉に、バイオレッタは首を傾げた。
 こんな時間に手紙が届くなんて、なんだか妙だ。
「……どなたからなの?」
「それが……菫青棟の前で侍女が受け取ったようなのです。ご覧になりますか?」
「ええ」
 紙面に目を走らせたバイオレッタは、はっと息をのんだ。
 ……「彼」からだ。
 それも、今からどうしても会ってほしいと書き連ねてある。
 バイオレッタは便箋を握りしめたまま逡巡した。
(どうしてこんな時に……。だって、お父様はもう二度と二人きりで会ってはいけないとおっしゃったわ。これからは監視の目も厳しくするからと……。なのに一体どうして――)
 なんとも大胆な行動に出た「彼」に、バイオレッタは一瞬呆気に取られてしまう。
 しかし、すぐさまガウンを取り上げ、ドローイングルームの扉を開けた。
「バイオレッタ様?」
「……ちょっと、出かけてくるわ」
「え!? こんな時間に、ですか?」
「ええ。どうしても終わらせておきたいことがあって。すぐに戻るわ」
「え……!? な、お、お待ちください、バイオレッタ様!」
 
 サラの制止を振り切り、バイオレッタは夜着の上に厚手のガウンを纏って菫青棟の外へと出る。
 
 ……そうだ。この感情にはもう終止符を打たねばならない。
 こんな風に執拗に付きまとわれるのにはうんざりだ。
 この想いの鎖が二人を繋いでいる以上、自分たちは延々と苦しむ羽目になる。
 新しい恋を謳歌することも叶わず、かといって終わった恋にもう一度火をつけることも不可能。
 ならば、どちらかの手でこの繋がりを断ち切るしかないではないか。
 そう思い、バイオレッタは冷たい夜気のもと指定された場所へ急いだ。
 すると――
 
「……こんな夜更けに、どこに行く気なの」
「……ピヴォワンヌ」
 目の前に立ちはだかったのはピヴォワンヌだった。
 彼女は長い芍薬色の髪を夜風に靡かせながらバイオレッタの前にたたずんでいる。
 走ってきたのか、その息は切れていた。
 辺りに夜闇が充満する中、彼女の吐息だけが白い。
 その顔は冬の冷気ですっかり蒼褪めており、生来の端整な造作と相まってまるで精巧に作られた高価な蝋人形のようにも見えた。
 緩く腕組みをしたピヴォワンヌは厳しい表情で問い詰めてきた。
「あいつの……クロードのところへ行くの?」
 バイオレッタのその沈黙を肯定と受け取ったのか、ピヴォワンヌはくしゃりと顔を歪めた。
「お願い、行かないで……!」
「ピヴォワンヌ……!」
「あんたがあいつのことを好きなのは知ってた。話してくれなくても、それくらいわかってた……。だって、あんたの目がそう言ってたから」
 一歩一歩、距離を詰められる。
 真摯な紅い瞳に捕らわれて、瞬きすらできなくなる。
「……あんたはいつもそう。あたしのことなんてまるで見てなくて……、あいつがいればそれでよくて……」
 ピヴォワンヌは普段の彼女からは想像もつかないほど弱々しい顔をしていた。
 そこでやおら腕を伸ばしたかと思うと、ピヴォワンヌはバイオレッタの身体を強く引き寄せた。
 しかも一瞬の隙を衝いて信じられない行動に出る。
「んっ……!?」
 バイオレッタは大きく目を見開いた。
 自分の唇にふわりと重ねられたもの。
 それは、ピヴォワンヌの唇だった。
 彼女の髪から漂う甘い芍薬の香りが、まるでヴェールのようにバイオレッタを包み込む。
 少女特有の柔らかみのある桜唇がさらに強く自分のそれに押し付けられ、その勢いで二人の前歯がこつりと触れ合う。
 
(なに、これは――)
 
 ありえない状況に頭が沸騰し、くらくらとめまいを起こす。
 まさか自分は、異母妹と唇を重ねているというのか。
 ほとんど親友の感覚で付き合ってきたピヴォワンヌと――?
 
「いやっ……!」
 思わずピヴォワンヌの身体を突き飛ばし、バイオレッタは手で口元を覆った。
「なにするの……っ」
「好きなのよ!! あんたのこと、好きなの……!!」
 いつもおしゃべりなピヴォワンヌの唇は、どういうわけか今夜に限ってひどくおとなしかった。
 言葉少なに、それでも彼女はなんとか自身の感情を吐き出そうとする。
「……あんたのこと、もう姉さんとしてなんて見られない。あたしは確かにあんたの妹でしかなくて、女の子で。あんたに選んでもらえるような人間じゃないかもしれない。だけど、あたしはあんたのことが……!」
 ピヴォワンヌがすべて言い切るのも待たずに、バイオレッタはごしごしとガウンの袖口で唇を擦る。
「やめて……! こ、こんなことしないでっ……! ひどい……!」
 その言葉に、ピヴォワンヌは傷ついたような表情を浮かべる。
 やがて、ふいと顔を背けて彼女は謝罪した。
「……そう、よね。ごめん」
 そう言って、彼女は所在なさそうに視線をさまよわせた。
 
 ……バイオレッタは自身の唇を手で押さえる。
(わたくしのここに、ピヴォワンヌの唇が触れた……)
 ありえない。そんなこと、あっていいはずがない。
 バイオレッタとピヴォワンヌは同性で、しかも同じ父親の血を引く異母姉妹でもある。
 彼女とは、この薔薇後宮で困難や苦楽を共にする仲間のように、そして一つだけ年の違う親友同士のように付き合ってきた。
 仲が良すぎるくらい仲が良かったのは事実だが、それにしたってこんな触れ合いを異母妹に許していいわけがない。
 
 蒼褪めて固まるバイオレッタに、ピヴォワンヌは必死で弁明した。
「……バイオレッタ、ごめん。あたし、あんたを傷つけようと思ったわけじゃないの。ただ、あたしはあんたのことが好き。あんたが他の誰を好きでも、それは変わらないの。あんたを……愛してるの」
 バイオレッタの身体はまたしてもぴしりと硬直した。
 ……愛している? ピヴォワンヌが、自分を?
「なんで……、どうしてなの……? いつからそんな……」
「……忘れちゃった」
 バイオレッタは答えあぐねるあまり、よろよろと数歩後ずさる。
 ……ピヴォワンヌ。大切な異母妹。ずっとこの王城で苦難を共にしてきた親友。
 その彼女が、自分を愛している? それも、単なる友人としてではなく、れっきとした恋の対象として?
(嘘よ……、そんなこと、あるわけが――)
 だが、口づけられた箇所がその想いを雄弁に物語っていた。
 手でもなく、頬でもなく、まして額や髪の一房などでもなく、彼女はごく自然にバイオレッタの唇にキスをした。
 それはつまるところ、思わず唇を奪ってしまいたくなるほどの激しい想いをバイオレッタに向けているということだ。
『愛すべき対象』としてバイオレッタを見ているということだ――。
「わ、わたくしは……、貴女がわたくしをそんな風に見ていたなんて知らなかったの……!」
「……うん。わかってる。あんたの心にはいつだってクロードしかいないのよね」
 ピヴォワンヌは今にも泣きそうに顔を歪めた。
「でも、伝えたかったの。あんたの心にいるのがあたしじゃなくてもいい。ここにいるあたしを認めて、バイオレッタ。あたしがこんなにあんたを想っているってこと、少しでも気づいてよ……!」
「……そんな。そんなこと……」
 バイオレッタはよろめく。
 そして奥歯を噛みしめると断腸の思いで彼女に告げた。
「気の迷いよ、ピヴォワンヌ……。貴女のそれは、恋じゃないわ。たった一時いっときの迷いでこんなことをしてはだめ」
「迷い……? あたしのこれが、単なる気の迷いですって?」
「ええ。貴女は友情を恋だと錯覚しているだけよ。わたくしが貴女に誰よりも近しい人間だからそんな風に思うだけ。それはお気に入りのぬいぐるみや小物が好きだっていうのとほとんど同じ気持ちで――」
「じゃあ……っ!! じゃああたしがこんなに切ない気持ちになるのはなんでなのよ……!? あんたから離れただけで痛いくらい胸が疼くのはどうしてなの!?」
「それは……!」
「説明できないくせに、そんな説教なんかであたしの想いを否定しないで!! あたしは本気であんたのことが好きなのに……!!」
 ピヴォワンヌはそのまま夜着に包まれた胸の上に手を置いた。
「……あんたがクロードに笑いかけるとね、いつもここが苦しくなるの。だって、あたしの方が先にあんたと出会ってるのにおかしいじゃない。あたしならあんたのことを一番近くで守ってあげられるし、力になってあげられる。なのに、あんたはいつもそう。鳥籠の外にいるあいつのことばっかり夢見てて、一緒に閉じ込められてるあたしには目もくれない……」
「ピヴォワンヌ……」
「こんなのってないでしょ……? どうして、どうしてあいつなのよ? どうしてあたしの気持ちを一時の気の迷いだなんて言えるのよ? 信じられない……!」
 バイオレッタはうつむき、途切れ途切れに声を絞り出す。
「……ピヴォワンヌ。ごめんなさい。わたくしは、貴女をいたずらに傷つけたかったわけじゃないの。ただ、わたくしに気持ちを向けるより先に、もっと別のものも見てみた方がいいって言いたかっただけで――」
「別のものって何? あんたじゃない他の誰かってこと?」
「そ、そうじゃなくて……! ただ、わたくしだけが貴女の気持ちを受け取るのはちょっと違うと思うのよ!」
 
 たとえば彩月。
 彼は明らかにピヴォワンヌに好意を寄せていた。「また劉に来い」とやや強引に約束を取り付けようとしたのはそのせいではないのだろうか。
 結局はピヴォワンヌの意思を尊重する形で提案を取り下げることとなったが、本当は彼はあのまま別れたくなどなかったに違いない。なんとかしてピヴォワンヌの気を引きたかっただろうし、色よい返事をもらいたかったはずだ。
 公主である玉蘭だってそうだ。玉蘭のふるまい方やその瞳の熱っぽさからしても、彼女がピヴォワンヌに友情以上の感情を抱いていたのは間違いない。
 あのぎくしゃくとしたやり取りを見るにつけ、二人の間に何かがあったことは確かだ。
 そしてそれは恐らく二人の関係に起因するものであるような気がした。
 
 バイオレッタはそこである考えにたどり着く。
(……もし、わたくしがピヴォワンヌの可能性の芽をすべて摘んでしまったのだとしたら)
 ピヴォワンヌが自分を見ているばかりにその可能性のすべてを台無しにしてしまっているのだとすれば、それはどう考えても褒められたことではない。
 何より、同性である以前に二人は姉妹同士なのだ。
 相手が玉蘭ならばさして問題はなかっただろうが、バイオレッタは血を分けた正真正銘の姉である。
 同性であり姉妹同士でもある二人がそんないびつな道に迷い込んでいいわけがない……。
 
「……ピヴォワンヌの気持ちには、応えられないわ」
 すると、ピヴォワンヌは静かに問い詰めてくる。
「あいつのことが好きだから……?」
「違うわ」
「……じゃあ、なんで」
 それだけ言って、ピヴォワンヌはうつむく。
 バイオレッタは静かに答えた。
「わたくしたちが姉妹でさえなかったら、貴女の気持ちには応えられたかもしれない。だけど、わたくしたちは血の繋がった姉妹でしょう?」
「……!」
「女の子同士だからだめだと言うつもりはないわ。わたくしも貴女の行動にはいつも元気をもらってきたし、一緒にいるととっても心強くて安心した。だけど、わたくしたちは血を分けた姉妹なのよ。わたくしは、貴女とそんな関係になるわけにはいかないわ」
 夜着の上で、バイオレッタは震える両手を組み合わせる。
 
(……わたくしではだめよ、ピヴォワンヌ。貴女が恋をするべき人間は、わたくしじゃない)
 
 同性愛は大陸では未だに風当たりが強いものだし、それでなくとも二人は血の繋がった姉妹同士だ。
 それを思えば、このまま突き放さなければいけない。彼女の気持ちを否定するのは辛いけれど、ここでバイオレッタが甘い顔をしては期待させてしまう。
 バイオレッタは良心の呵責に押しつぶされそうになりながらもきっぱりと告げた。
「ごめんなさい、ピヴォワンヌ。ここでわたくしが貴女の感情を受け止めるわけにはいかない。一度でもそんなことをすれば、わたくしたちは引き返せなくなってしまう。まだ恋も知らない貴女を、姉のわたくしがそんな道に引きずり込んでいいわけがないわ」
 ピヴォワンヌは真っ白な吐息とともに小さな笑い声を漏らす。
 ……か細く、頼りなく、どこか卑屈な笑い声を。
「……はっきり嫌いって言ってくれた方がましだったわ。あんたは残酷ね」
「……ごめんなさい」
 バイオレッタは身が引きちぎられる思いだったが、なんとか歩き出した。
 石のように強張っている両足に命令を下し、ピヴォワンヌの脇をすり抜ける。
 すると、そんなバイオレッタの腕を彼女は強く掴んだ。
「……行っちゃ駄目」
「でも、わたくし――」
「またあの時みたいになりたいの!?」
「……!」
 
 ピヴォワンヌに随分心配をかけてしまったこと、彼女が彩月とともにクロードと対峙した話や、彼女が『絵画の世界』から自分を救ってくれた時の話も、バイオレッタはすべてを聞かされていた。
 
 ……またあの時のようになったら。
 その言葉と懸念が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
 だが、バイオレッタだってこの気持ちに早く決着をつけてしまいたかった。
 城で顔を合わせるたびに辛くなるくらいなら、もういっそのことすべてを終わらせてしまいたかった。 
 
 バイオレッタはピヴォワンヌを振り仰いで懇願した。
「……お願い。今だけ……今夜、少しだけ時間をちょうだい。ちゃんと考えるから……。クロード様とのことが片付いたら、ちゃんと貴女の気持ちを考えるし、できるだけ添うようにするから。だから、今は行かせて」
 ピヴォワンヌはそれ以上追及してくることはなかった。
 渋々といった様子でバイオレッタの腕を放すと、残念そうに言う。
「……わかったわ」
 
 
 
 バイオレッタが指定された場所――薔薇後宮の『愛の神殿』へ向かうと、そこにはすでに黒衣の魔導士の姿があった。
「――お待ちしておりましたよ、私の姫」
 暗闇の中からゆったりと誘いかけるような声がする。
「きっと来てくださると信じていました。たとえ何があろうとも、貴女はどうせ最後には私を選ぶ……。それは遥か昔からの決まりごとのようなものだ。もはや変えられるはずもない……」
 歌うように言葉を紡ぐクロード。
 その姿に、バイオレッタは喩えようのない憐憫を感じた。 
 
 二人はこの場所で愛を語り合ったあの日とはすでに想いを異にしている。
 一方はその執着から逃れる道を選び、もう一方は何とかして愛を継続させようと躍起になっている。
 それをバイオレッタは「哀れだ」と感じた。
 どんなに愛が崇高な存在であっても、終焉は避けられない。
 この世に「絶対に変わらない愛」などというものは存在しないのだ。
 それをバイオレッタはクロードとの恋で痛いくらい理解した。
 
(誰も傷つかずに終わる愛なんてない……。そしてわたくしは、この方を置いてこの愛から去ろうとしている。この方の気持ちを知っているくせに、自分だけ逃げるような真似をしようとしている……)
 
 未だ胸に巣食う迷いを振り切り、バイオレッタは毅然と顔を上げた。
「……ご用件は何でしょうか」
 弱々しく彼をにらみつけ、バイオレッタは問うた。
 すると彼は背を揺らしてくっくっ……と嗤う。
 そしてやおら顔を上げると言った。
「……誤解を、解いておきたいと思いましてね」
「……誤解?」
 クロードは微笑み、静かにバイオレッタに歩み寄った。
 ……クロードの衣服からは甘くパウダリーな香りがする。郷愁の彼方へと誘いかけるような、甘い匂い菖蒲の香りが。
「私はどうやら、姫を必要以上に怖がらせてしまったようです。その件で一言、お詫びをしたいと思いまして」
 詫びなどと銘打ってはいるが、要するにもっと違う目的があるのだろう。
 そもそも単に詫びるだけなら昼間に呼び出すのでもかまわないはずなのだ。あえてそうしなかったということは、どうしてもバイオレッタと二人きりになりたい理由があったということだろう。
 バイオレッタは月光に煙る白銀のまつげの下から、じっとクロードをねめつけた。
「……お芝居はもうたくさんですわ。一体何がおっしゃりたいのですか、クロード様」
 強気に発言を促す。
 すると、彼は普段の様子からは想像もつかないほどの強い力でバイオレッタの両手首をまとめ上げた。
「きゃ……っ!?」
 そのまま夜気で冷えた石柱に背を押し付けられる。バイオレッタはその衝撃と冷たさに軽く呻いた。
 上から覆いかぶさるようにしてバイオレッタの顔を覗き込みながら、クロードは熱っぽく彼女をなじる。
「ああ、本当にいけない姫だ。散々劣情を煽っておきながら、こうして私を袖にして……!」
「いやあっ!!」
 バイオレッタは完全に恐慌をきたした。
 
 呼吸を荒げて、肩を上下させて。濡れた唇からはきりもなく吐息が漏れ、苦しそうですらある。
 こんな醜態を晒すなど、クロードらしくもない。
 しかし、彼は一体どうしてしまったのか……などという可愛らしい疑問は抱かなかった。
 クロードの目的は明白だ。
 今度こそ、バイオレッタを自分のものにするつもりなのだ。
 
 さっと顔を背け、頭上で拘束された両手首を緩く動かして懇願する。
「やめて、退いて……!」
「いいえ。貴女がうなずくまで退きません。芝居はもういいと、貴女がおっしゃったのではありませんか。ならば見てください……、その目できちんと確かめてください。この私の素顔を……」
 言うなりクロードは、素早くバイオレッタの唇をついばんだ。
 バイオレッタがふるりと震えると、彼は喉の奥でくつくつと嗤う。
「実った果実に食べ頃があるように、恋にもまた刈り取るのにちょうどよい時季というものがある。戯曲のお好きな姫ならお分かりになるでしょう? 早すぎては味気なく、遅すぎては実が腐ってしまう。今宵は私たちの想いを成就させるにはよい頃合いではありませんか?」
 クロードはもっともらしく説いて聞かせる。
 確かにそうなのだろう。早すぎても遅すぎても恋を成就させるのは難しい。適切な頃合いというのはある。それは男女の仲において当然のことかもしれない。
 だが、それはバイオレッタがクロードを愛していればの話だ。
 彼に対してはなんの感情も抱いていないどころか、恐怖さえ感じている。
 クロードは激情のあまり相手を監禁し、その自由を勝手に制限するような男だ。そんな相手に「刈り取られる」のはごめんだった。
「わたくしは、あなたのことなんかもう好きじゃありませんわ……! 思い込みもいい加減にして……!」
「以前貴女に対して行ったことについては謝罪します。ですから、また今まで通りに『仲良く』しましょう? 貴女だってまだ私を愛しているのでしょう? だからここへいらした。そうではないのですか」
「愛してなんか……!!」
 憤るバイオレッタを、クロードはふいに抱きすくめた。
「……!」
「お慕いしています。私の姫……、私の春風。貴女さえいれば、私は何もいらない。すべて捨ててもいい。貴女と同化して生きてゆけるなら本望だ……」
 倒錯的な言葉を、クロードは恥ずかしげもなく紡いだ。
 その口調にためらいがなく、やけに毅然としていることに、バイオレッタはかえって恐ろしさを感じた。
 せり上がる猛烈な嫌悪に、彼の腕を振り切って逃げる。
「放して……っ!!」
 庭園の中に駆け出すバイオレッタを、クロードが羽交い絞めにする。
 二人はそのまま茂みの中へともつれ込んだ。
「……いや、やぁ……っ!!」
「逃げてはいけませんよ」
 ネグリジェから露出している素足に、クロードの足が絡む。……まるで舞踏を踊っているかのように。
 それはいつかのような穏やかな舞踏などではなかった。
 性急で、身勝手で。そして有り余るほどの情欲にまみれた滑稽でふしだらなダンスだった。
 
 足を絡ませられてよろめいたところを大きく引き倒される。
 身じろいで逃げ惑うバイオレッタの肩を、クロードは上からしっかりと押さえつけた。
「……ああ、いい眺めですね。私などにのしかかられて、身動きを封じられて。ぞくぞくするような光景だ」
「悪趣味ですわ!! 早くお退きになって!!」
 張り上げた声はみっともなく震えてしまう。
「ふふ……私をまるで蔑むような目でご覧になって。それもそのはずですね。貴女は今夜、私のものにされてしまうのですから……」
「っ……!」
 耳朶に吐息を吹きかけながら、クロードはささやく。
「私を見るとき、貴女はまさに私を欲しがる目つきをしていた……。それに私は気づいていました……もうずっとです。それをお可愛らしいと思いながらも、私は貴女の愛に応えて差し上げることができなかった」
「はなして……!」
「ですが、ようやく私たちは結ばれる。長かったですね、姫。いいえ、バイオレッタ。今夜、貴女の想いを昇華させて差し上げる……。そのもどかしさすら楽にして差し上げます」
「違っ……! やめて……、こんなのは愛じゃない! 単なるあなたの『執着』よ……!」
 バイオレッタは悲しみにふるふると唇を震わせ、か細い声で訴えた。
「わたくしをそうやって、あなたのところに縛りつけようとしないで……!」
 
 ……クロードの愛とは、そもそも相手に何かを与える愛などではない。相手をがんじがらめにして縛る愛なのだ。
 彼は最初からバイオレッタの想いを信用していない。バイオレッタが自分など好いてくれるはずがないと疑ってかかっている。
 だから贈り物や親切な言葉で懐柔したのだ……、年若く無知な王女がまっすぐ自分を慕ってくれるように。
 彼の根底にあるのは恐らく自信ではなく強い劣等感だ。
 だからこそ相手を自分のところに繋ぎとめておかなければ気が済まない。
 バイオレッタを心の拠り所とし、なおかつその隅々まで支配しつくさなければ不安でしょうがないのだ。
 だからこそもったいぶらずにいくらでも愛をささやけるのだろう。
 
(全部、騙された……! 最初からこうやってわたくしを手籠めにするつもりで……!)
 
 バイオレッタは身じろぎ、ネグリジェの前を必死で掻き合わせる。
「わたくしの心を繋がないで……! あなたのところに縛りつけておかないで……! そんなのは嫌……!」
「――貴女までそんな戯言をおっしゃるとはね。自由になど、するはずがないではありませんか。貴女は私のところにいればいい。私のもとにさえいれば、悲しい思いをせずに済むのです」
 バイオレッタは声を張り上げた。
「今だってじゅうぶん悲しいわ!! まさかクロード様がこんな方だったなんて……!! 信じていたのに……、愛していたのに……!! あなただけは他の殿方とは違うと思って……っ」
「貴女がいけないのですよ、私の姫。これでわかったでしょう? 気軽に男に『愛している』などとおっしゃってはいけない……。男は貴女を欲しがってやまなくなる……。貴女を自分だけのものにしたいと望んでしまう。……この私のようにね」
 突っぱねようとした手を取られ、ますます強く草むらに縫い留められる。
 クロードはバイオレッタの手に自らの指先を差し込むと、ぐっと体重をかけて身動きが取れないように拘束した。そのままバイオレッタの両膝のあわいに強引に自らの脚を割り入れる。
「いやっ……!」
「じっとして……」
「いやです! 放して!」
「ふふ。こんなに美しい月夜に貴女のすべてを味わえるとは……私は本当に果報者だ。さあ……、どうやっていただきましょうか?」
 空を振り仰いで妖艶に笑むと、クロードはやおら右手を覆う白手袋に歯を立てた。きつく噛みしめ、バイオレッタに見せつけるようにするすると外す。
 ぱさりと音を立てて白手袋が落ち、なめらかでありながらも力強く骨ばった男の手が露わになった。
「ああ、これでいい……。これで貴女の美しい素肌を存分に愉しめます」
「お願いですから、もう……!」
「お願い? 今更聞きませんよ、そのようなこと。わがままでおしゃべりなこのお口は、もう塞いでしまわなければ……」
 言って、クロードはふっくらとした唇を柔く吸った。半端に開きかけた唇を隅々まで舐められ、ついばまれ、時折舌先でつつかれる。
「ふっ……」
 くすぐったさに思わず声が漏れ、バイオレッタは強く唇を閉ざそうとした。
(いや……!)
 クロードの強引なキスを、バイオレッタはなすすべもなく受け入れた。
 いや、そうするよりほかなかったのだ。
 獣性を露わにしたクロードの前で、バイオレッタはどうしようもないくらい非力だった。
 力でも策略でも、バイオレッタはクロードにはけして勝てない。
 そのことをより強く実感させられ、思わず涙目で近づいてくる瞳を睨む。
 すると彼は瞳だけで妖しく微笑み、いつものように丹念に口腔をまさぐりだした。
「んん……っ!!」
 バイオレッタは不快感と一抹の悔しさから眉根を寄せる。
 無理やり身体を奪われそうになっているというのに、なぜだか深く愛でられているような奇妙な錯覚に陥る。
 おまけに仕掛けられるキスが激しくなればなるほどバイオレッタの身体は言うことを聞かなくなった。
 こんな口づけ一つであっけなく籠絡されてしまう自分が恨めしくて、バイオレッタは彼の手の甲に深く爪先を食い込ませる。
(このキス……だめ……)
 角度を変え、強さを変えて唇を重ねられる度、夜気で凍えていたはずの肌が急速に熱を帯びてくる。
 こんなことをされたって嬉しくもなんともないはずなのに、身体だけが心を置き去りにしたまま疾走し出す。
 キスで頭がぼうっとしている間に、肩から腕へと指先が這う。
 不埒な感触に気づいたバイオレッタは懸命に首を打ち振って口づけから逃れた。
「だ、だめっ……!」
 儚げな鳴き声が辺りに響き渡る。
 しかし、そうして声を上げるのが精いっぱいだった。
 クロードがガウンを剥ぎ取ってネグリジェの上から柔肌を弄んだ時、バイオレッタの喉はひくりと引きつった。
 こまやかな口づけですっかり抵抗する気力を削がれた王女の肢体に、魔導士の熱い指先が触れる。
 バイオレッタはそうやって好き放題に肌を触れまわされながら、身も世もなくむせび泣いた。
 ようやく最愛の姫に思うさま触れる機会を得たクロードは、欲望のままに彼女の肌を愛撫した。
 バイオレッタは息も絶え絶えに、どうにかして彼の手を引きはがそうとした。
「いや……、やめて……! こんなことをなさってはいけません……!」
「ええ。そうですね。ひとたび禁断の果実を味わってしまっては、私はもう後には戻れない……。それは人を堕落させ、耽溺させるもの。私が今歯を立てようとしているのは、それほどまでに罪深い果実だ……」
 つ……とクロードの指先が脚に触れる。
 バイオレッタは片手が自由になったのをいいことに、彼の身体を勢いよく押しやった。
 弾みで白皙の頬に爪を立ててしまい、クロードが小さく呻く。
「っ……!」
 頬に浮かんだ血の珠を指ですくい、彼はほの昏い笑みを浮かべる。
「……痛みと快楽は隣り合わせとはよく言ったものです。貴女に与えられる痛みならば、なんでも快さにすり替わってしまう。拒絶も罵倒も……、こうして傷つけられることさえ気持ちがいい」
 ぞっとするような微笑を載せ、クロードは半身を深く倒した。
 またしても口づけられそうになって、バイオレッタは反射的に顔を背ける。
「だ、だめ、キスはもう……っ」
 しかし、クロードは残酷に微笑むと無理やりその唇を奪った。
 唇を塞がれ、両手もがっちりと絡ませられて、バイオレッタの眦からぽろぽろと涙がこぼれてゆく。
 クロードの舌が緩やかに口内で蠢いた時、恐怖とも悦楽ともつかぬ何かが身体の奥底からせり上がった。
「んっ、ん……!!」
 闇の中、バイオレッタの肢体が小刻みに跳ね上がる。
「ふっ……!!」
 クロードのキスはいつになく執拗だった。バイオレッタがいくら嫌がって顔を背けても、臆することなく貪欲に食らいついてくる。それはまるで応酬するかのごとく激しい口づけだった。
 嫌悪から萎縮する舌を、彼は巧妙に絡めて吸い上げた。その感触に、思わずクロードの手を握りしめてくぐもった声を上げる。
「んん……っ」
 そうして息を乱すバイオレッタを、クロードは嘲るように笑った。
 先ほどまでの乞うような口調とは裏腹に、彼は偏愛する王女の唇をじっくりと堪能し始める。
 未だ胸の奥底でくすぶる想いの燃えさしに、無理やり火をつけられてゆくような感覚。
 唇を受け止めるたび、舌先を触れ合わせられるたびに伝わってくる、クロードの憤怒。
 鼻腔をくすぐる、嗅ぎ慣れた香水の匂い。絡ませられた指先の熱さ。全身にかかるその重みまで。
 バイオレッタは涙を流しながら彼のすべてを受け入れる。
 どうしようもないやるせなさと、悲しみと、一抹の後悔とを感じながら。
 いつかのようにその舌先に歯を立てることも叶わずに、バイオレッタは口内で繰り広げられる濃密な触れ合いをなすすべもなく甘受した。
 
 やがて、厚みのある唇が銀の糸を引きながら離れてゆく。
 月明かりの下、それはなんとも淫靡なきらめきを放った。
 ようやく唇を解放されて朦朧としていた矢先、ネグリジェの胸元を大きくずり下げられてバイオレッタは狼狽した。
「だ、め……、やめて……、お、お願い、これ以上は――!」
「聞けませんね。一体いつからそのように反抗的になってしまわれたのです? 出会ったばかりの頃は違った。貴女はひどく従順で、いつも私の言葉に愛らしくうなずいて好意を示してくださった。なのに、今夜の貴女ときたら……」
 バイオレッタはふるふると首を振った。
 これは一種の洗脳だと、もうわかっている。クロードが自分に都合よく事を運ぼうとして口にしているにすぎないのだと。
「……わたくしはもう、あの頃のわたくしとは違います。何も知らずにあなたにただ従っているだけの、無垢な少女ではありません」
「ああ……、残念ですよ、姫。私たちはこの上なく仲睦まじい間柄になれそうだったのに」
 独り言のようにつぶやくクロードの肩を、バイオレッタは渾身の力で押しやる。
「こんな風に自由を奪う愛なんて、わたくしはいらない……!! あなたなんて……あなたなんて、大嫌い……!!」
 が、何を思ったか、彼はじっとりとした笑みを浮かべてバイオレッタを見下ろした。
「そうです……、もっと私を憎んで、姫。この心をずたずたになるまで痛めつけてください。貴女を想う心が拍動しなくなるまで……」
 ぞっとするような笑顔と台詞に、背筋が凍り付く。
「な……! なにを……!」
「ふふ……、最後に一つ、とっておきの絶望を与えて差し上げましょうか」
「……な、にを……」
 そこでクロードはさらなる衝撃でもってバイオレッタを打ちのめした。
「――貴女のお母君を殺したのはこの私です。そして、リシャール様に『時知らずの奇術』を施したのも」
「な――」
 反射的にすくんだバイオレッタのデコルテに、クロードの顔が埋められる。
 彼はまるで吸い寄せられるようにその箇所に唇を寄せた。
 バイオレッタは彼の頭を引きはがすこともできずにただ身を強張らせていた。
「いや、いや……、なんで、そんな……」
 
 まさか、そんなことがあるはずがない。
 だって、クロードは最初からリシャールを信頼している風だった。
 箱馬車クーペに乗せられてここへ連れてこられた日も、彼はリシャールに仕えることができるのを心底喜んでいる様子だった。
 それどころか、バイオレッタの母妃エリザベスを殺したのも自分だという。
 すべての事実をうまく受け止めることができず、バイオレッタはただ息をするのが精いっぱいだった。
 リシャールに尽くす姿に、薔薇園で見せた穏やかな笑顔。
 亡き母妃エリザベスの話を聞かせてくれた時の真剣な態度まで。
 あれが全部嘘だったと……この男の打った芝居だったというのか――。
 
「そんな、嘘……。そんなこと、あるはずが――!」
 微動だにしなくなったバイオレッタの夜着を大きくはだけさせると、彼は無慈悲に告げる。
「おや。この期に及んでまだそのようなことをおっしゃるのですか? 私がこんな卑怯な真似をする男だとわかっているくせに?」
「う、嘘です……、だってそんな、あなたがそんなことをなさるはずが……!」
「ふふ……、それにしても、あの青年は哀れでしたね。貴女に想いを寄せていたにも関らず、私ごときにむざむざ命を奪われて……」
 不穏なクロードの言葉に、バイオレッタのすみれ色の瞳は戸惑いに揺れた。
「な、何……っ? 何の話を……」
 眼を射るように白いバイオレッタの鎖骨をきつく吸い上げると、クロードはとどめを刺すように告げた。
「おや、もう忘れてしまわれたのですか? これは傑作ですね。幼馴染の貴女の身をあんなにも案じていたというのに……」
 ……まさか、と思った刹那、バイオレッタの全身にひやりと冷たい汗が浮かぶ。
 嘘だ、と思いながらも、彼女は強張る唇を無理やり開いた。
「まさか、アルバ座に火をつけたのはクロード様、なのですか……!?」
 クロードは否定も肯定もせず、ただ黙っている。
 しばしの沈黙ののち、胸元から顔を上げた彼は整った顔にこの上ない愉悦の笑みを刷いた。
 ……その琥珀のごとき双眸をうっとりと細め、形のよい唇をわずかに上へ持ち上げながら。
 
「いやああああっ!!」
 バイオレッタは絶叫した。
 甲高い悲鳴を封じるように、クロードがすかさず微笑交じりのキスでその唇を深く塞ぐ。
「ん、んう……! ふっ……!」
 絡みついてくる男の手足から逃れるすべはなく、彼女はただクロードのいいようにされるしかなかった。
 いつかのように噛みついてやろうと思っても、全身が凍えて動くことさえままならない。
 
(嘘よ……、そんな……。クロード様が、お父様を、トマスを――)
 
 唯一心を許した男の裏切りを、バイオレッタは受け入れられなかった。
 嘘だ。何かの間違いだ。
 あるいはいつものようにからかわれているだけだ……。
 何度も何度もそう言い聞かせながら、必死で口腔を貪るクロードの舌から逃げ回る。
 
 そうして口づけられている間にも、すでに悲しみと衝撃で息が止まりそうだった。
 追い打ちをかけるように仕掛けられる激しいキスに、本当に呼吸が止まってしまいそうな錯覚に陥る。
 ……ああ、自分はこのままここで死んでしまうのかもしれない。
 この黒衣の青年によってこの命を奪われてしまうのかもしれない――。
「……ふふ。あの役者は本当に哀れでしたね。貴女のことを本気で愛していたのでしょうに」
 せわしなく上下する華奢な肢体から、絹の夜着が音もなく滑り落ちてゆく。
 すっかり抵抗する意志を削がれたバイオレッタは、虚ろな瞳でその様子を眺めていた。
 ……父を、母を、そして友を害した男の姿が、今夜は死神タナトスのそれに見えた。
「ああ、美しい肌だ……。今夜ようやくこのすべてを私のものにできるのですね」
 夜気に晒される白い素肌に、クロードの長い指先が落ちてくる。
 バイオレッタは遠のきかける意識の中、彼とのこれまでを思い出していた。
 ただクロードと楽しい時間を過ごして、笑い合って、時には痛みを共有して。
 ただそれだけでよかった。
 愛を確かめ合うにしても、こんな風に一方的に支配されるようなものになるとは全く思っていなかった。
(どうして……? わたくしが馬鹿だったの? わたくしは、一番信じてはいけない方を信じてしまったの……?)
 嘘だと思いたい。
 だが、のしかかってくるクロードの重みがそれを否定する。嘘ではない、現実だと言い聞かせる。
 やがて、薄弱した意識が考えることを放棄し始める。
 もう嫌だ。
 もう、目の前に広がる世界を見ていたくない。このままここではないどこかへ逃げてしまいたい。
 ……自分が自分であることを、捨ててしまいたい。
(ごめんなさい、ピヴォワンヌ。貴女の言うことを素直に聞かなかったばっかりに、わたくしは――)
 刹那、彼女の意識は突如として彼方へ飛んだ。
 
 
 

 

冒頭からピヴォワンヌの百合が炸裂している章。
バイオレッタとしては、近親愛が大陸において禁忌であること、そしてこれまで積み上げてきた友情や姉妹としての絆を思えばとても応えられない……と判断したうえでの拒絶でした。
本当は誰よりもバイオレッタを大事に思っているのがピヴォワンヌなのに、色々と報われないです。
しかもピヴォワンヌと別れた後はクロードから迫られていて、この章では恐らくほとんど息をつく間もなかったであろうバイオレッタ。三人の堅固でいびつな絆の正体はこの後徐々に明らかになります。
 
 
 
 
 

 

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