薔薇後宮奇譚 第三部 邂逅編

薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第三部 邂逅編

第九章 贄と依代

その晩、ジン神殿の出現を悟った異教徒たちは、砂漠の合間に突如浮上してきたその建物の中になだれ込んだ。  ランプの灯りを頼りに、ぽっかりと口を開けた闇の中へ身を投じる。 すると、たちまち神殿内部に燭台の灯りが点り出す。 まるで彼らの訪問を欣喜...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第三部 邂逅編

第十章 もう一つの邂逅

「随分手際が悪いと思ったら、またその娘の相手をしていたのか。これは笑わせる……」「は、申し訳……」 クロードは殊勝に頭を下げると、女の傍らに跪いた。「え……、クロード、さま……?」 跪くクロードを従え、黒髪の女は妖しい笑みでバイオレッタを圧...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第三部 邂逅編

第十一章 死闘

「……っ」「もうおしまいですか、水の依代アベル?」 斬りつけられた右腕を押さえ、アベルは呻く。「ハッ……、やっぱりお前性格悪いな。そんな物騒な得物で斬りかかってくるとかさ」 フランブルジュの波のようにうねった刀身を、クロードは愉しそうに舌先...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第三部 邂逅編

第十二章 外れた歯車

「――火の神アイン! 絶対にお前を、仕留めてみせる!」 スピネルのその宣告に、力強い声で応えるものがあった。「よく言った、ルヴィ隊筆頭騎士スピネル」「アベル君……」「俺があいつの足止めをする。だからその間お前たちは少しでも多く時間を稼いでく...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第三部 邂逅編

第十三章 少年王に捧げる弔歌

その晩、バイオレッタたちはオトンヌ宮の大広間である≪享楽の間≫へと続く廊下を並んで歩いていた。 最前列をオルタンシアとミュゲが、次の列をバイオレッタとピヴォワンヌが行く。 その後ろに並ぶのはアスターとプリュンヌで、二人はそれぞれの侍従と侍女...
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第十四章 ふたりの女王

国王リシャール崩御の報(しら)せは、瞬く間に大陸中に広まった。 残された王子王女たちは父王の弔いの儀を執り行い、そして次期女王の選出を急いだ。  リシャールが守り抜いた黄金の玉座に座したのは、バイオレッタ・エオストル・フォン・スフェーン。彼...
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最終章 ただひとりの愛する人よ

即位式から数か月が経過した。 バイオレッタはプランタン宮の廊下にたたずみ、ぼんやりと夏の青空を見上げていた。  数日降り続いていた雨がやみ、雲間からは太陽の煌めきがこぼれている。宮殿の周りに植えられたたくさんの樹木が、眩しいほどの青色に彩を...
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