薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第三十四章 巡る思惑

次の日の昼。 オトンヌ宮では王室の面々を集めた食事会が開かれていた。 ミュゲは平静を装いつつカトラリーを動かし、雉(きじ)のローストを口に運ぶ。 広いテーブルにはオルタンシアの姿だけがなく、いつまで経っても彼女が≪享楽の間≫に姿を見せる気配...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第三十五章 恋の獄

「……どうかなさいまして、シャヴァンヌ様?」 クロードは貴婦人のデコルテを愛撫していた指先をぴたりと止めた。  ……深更のサロン。招待を受け、気乗りしないながらも顔を出したのだが、やはり来るべきではなかったと後悔した。 周囲には賭け事と恋愛...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第三十六章 小夜啼鳥の恋歌

……四阿の椅子の上、二人は並んで腰かけて夏の風に身を委ねていた。 時折水を求めて降りてくる小鳥たちを、バイオレッタは指先で呼び寄せる。「ふふ、いらっしゃい」 残念ながら呼びかけに応じる鳥は一羽もいなかったが、ピアノの周囲や噴水の縁で思い思い...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第三十七章 邪神のささやき

「……姫。貴女は女王選抜試験を降りるつもりはありませんか」 ふいに耳朶に落ちたクロードの言葉に、バイオレッタは瞠目した。「……えっ?」「私のところへ降嫁なさる気はありませんかとお訊きしているのです」「え……」 一瞬、聞き間違いかと思った。 ...
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間章Ⅴ 宗教騎士たちの到着

黒髪の少女は宿屋のホールから一歩外へ出て伸びをした。「うーん。王都はさすがに小綺麗ねー!」  ……船旅を終え、港からスフェーンに入り、宿を取って数日。 宗教騎士であるスピネルとラズワルドの二人は、教皇ベンジャミンの言いつけ通り、王都アガスタ...
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第三十八章 繋がれた感情

バイオレッタは、意気揚々と≪星の間≫からの帰路を急いでいた。  ……今日は女王選抜試験の結果を聞きに、単身リュミエール宮へ足を運んだ。正式な場ではないので、筆頭侍女であるサラは連れてきていない。  今日は四人の王女たちの支持率が明らかになる...
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第三十九章 狂いだす愛

次の日。 彼との約束通り、バイオレッタはクロードとともに薔薇後宮の東棟へ足を運んだ。  この東棟は様々な植物園を集めた場所だ。 話によれば、リシャールは王女が生まれるたびにここの庭園を増設させたのだそうで、紫陽花園、鈴蘭園、李園といった王女...
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第四十章 姦計 ―THE END―

一枚の絵画となったバイオレッタの姿を、黒衣の魔導士はうっとりと眺めていた。 辺りには魔術の残滓が未だ音もなく漂っている。 紅い閃光の名残は、まるでクロードの周囲を取り囲むようにちかちかと瞬いていた。  彼は眼前に浮遊する額縁から目が逸らせず...
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