薔薇後宮奇譚 第二部 ピヴォワンヌ編

薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十五章 公主の秘め事

「……あの子もいい加減あいつ(クロード)のことなんか忘れられればいいんでしょうけどね」  廊下に立ち尽くしていたピヴォワンヌはぼそりと言い、二人の後ろ姿がすっかり見えなくなったところでその場を離れた。  単身薔薇後宮に引き返すべく歩を進める...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十六章 愛執の宴

クロードの生み出した『絵画の世界』から助け出され、薔薇後宮の自室に戻ってきてひと月ほどが経過した。  だが、バイオレッタは終始浮かない顔つきで毎日を過ごしていた。    ……その日、バイオレッタはドローイングルームのソファーの上で刺繍をして...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十七章 初めての恋が終わる時

「どういうことなのっ……!? さっきのあれは何!?」  オトンヌ宮での晩餐会を終えた後、ミュゲはクロードを秘密裏に庭園へ呼びつけ、声高に詰問した。 「何、とは……?」 「嘘つき!! お前は言ったわ……、わたくしを愛していると。女王になりさえ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十八章 強さと弱さ

「いい月だなぁ。秋の月だ」    噴水の縁に並んで座った二人は、何をするでもなくただぼんやりと夜空を見上げていた。  傍らではなだれ落ちる噴水の水がなんとも涼しげな音を立てている。  ミュゲの心はその水音にようやく平静を取り戻した。  飛沫...
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第二十九章 無限廻廊リビドゥー

……オトンヌ宮での晩餐を終え、みなが思い思いの道順で帰路に就き始めた頃。  薔薇後宮へ駆け出したミュゲがアベルに慰められている間、クロードの頭は愛しの姫君にどう声をかけるかという邪な感情で沸き立っていた。    先刻、クロードは自分でもほと...
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第三十章 バイオレッタとミュゲ

その日、ミュゲはバイオレッタに会うため単身菫青(アイオラ)棟へと足を運んだ。  薄紫の扉を叩き、筆頭侍女に取り次いでもらう。 「……バイオレッタ姫にお会いしたいのだけど」  言葉少なにそれだけ言い、ミュゲは眉を引き絞る。  筆頭侍女サラは一...
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第三十一章 決着をつけるとき(前編)

――西国(さいごく)スフェーンから故郷の劉に帰ってきて早くも数週間が経過した。  その日、玉蘭は何をするでもなくただぼんやりと宮城の中庭から空を見上げていた。  中庭ではもう赤や白の椿が艶やかに開花し始め、周囲の枇杷(びわ)の木もほころんだ...
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第三十二章 決着をつけるとき(後編)

――その日、玉蘭は中庭で花を眺めている姉に声をかけた。 「姉様」 「あら、玉蘭。どうしたの?」  ふわりと笑う宝蘭に、玉蘭は鋭い視線をぶつける。 「玉、蘭……?」  姉がたじろいだのを尻目に、玉蘭はその足元に長剣を鞘ごと放り投げた。 「玉蘭...
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