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薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十八章 強さと弱さ

「いい月だなぁ。秋の月だ」    噴水の縁に並んで座った二人は、何をするでもなくただぼんやりと夜空を見上げていた。  傍らではなだれ落ちる噴水の水がなんとも涼しげな音を立てている。  ミュゲの心はその水音にようやく平静を取り戻した。  飛沫...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十九章 無限廻廊リビドゥー

……オトンヌ宮での晩餐を終え、みなが思い思いの道順で帰路に就き始めた頃。  薔薇後宮へ駆け出したミュゲがアベルに慰められている間、クロードの頭は愛しの姫君にどう声をかけるかという邪な感情で沸き立っていた。    先刻、クロードは自分でもほと...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第三十章 バイオレッタとミュゲ

その日、ミュゲはバイオレッタに会うため単身菫青(アイオラ)棟へと足を運んだ。  薄紫の扉を叩き、筆頭侍女に取り次いでもらう。 「……バイオレッタ姫にお会いしたいのだけど」  言葉少なにそれだけ言い、ミュゲは眉を引き絞る。  筆頭侍女サラは一...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第三十一章 決着をつけるとき(前編)

――西国(さいごく)スフェーンから故郷の劉に帰ってきて早くも数週間が経過した。  その日、玉蘭は何をするでもなくただぼんやりと宮城の中庭から空を見上げていた。  中庭ではもう赤や白の椿が艶やかに開花し始め、周囲の枇杷(びわ)の木もほころんだ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第三十二章 決着をつけるとき(後編)

――その日、玉蘭は中庭で花を眺めている姉に声をかけた。 「姉様」 「あら、玉蘭。どうしたの?」  ふわりと笑う宝蘭に、玉蘭は鋭い視線をぶつける。 「玉、蘭……?」  姉がたじろいだのを尻目に、玉蘭はその足元に長剣を鞘ごと放り投げた。 「玉蘭...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

あらすじ

【あらすじ】 スフェーン大国で暮らす少女ルイーゼは、ある日黒衣の魔導士クロードによって王城へと導かれる。 自分が失踪していた第三王女「バイオレッタ」であるという真実を告げられ、次代の女王選出、そしてクロードが仕掛けた陰謀劇に巻き込まれてゆく...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

『薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~』キャラクター紹介

『薔薇後宮奇譚』に登場する人物のまとめです。第一部に登場するキャラを中心にまとめています。 キャラクターイラストは順次追加予定です。     メインキャラクター    バイオレッタ   名前:バイオレッタ・エオストル・フォン・スフェーン 年...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

序章

少女は、夢を見ていた。 「――、……っ……!」  ……ざあざあと降りしきる雨の中、誰かが泣いている。  蒼白のかんばせは、雨とも涙ともつかぬしずくで濡れている。  長躯に纏うのは純白のコートだ。薄い金の髪を背に流したその男は、ほっそりとした...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第一章 黄金の都、さだめの都

――春の風が吹き荒れる、三月の王城。  バイオレッタ女王の戴冠式が、中庭のバルコニーで行われていた。  記念すべき式典の日ということで、今日は王城の一部が民たちに一般開放されている。ピヴォワンヌは旅装のまま、人々の中に混じってバイオレッタの...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第二章 黒衣の魔導士

……王都アガスターシェの中央区繁華街に位置する劇場「アルバ座」。  そこがルイーゼの暮らす場所だった。  一流女優と謳われたマリアが突如病死した後もそれは変わらず、ルイーゼはアルバ座で下働きと稽古を続けていた。  歌は相変わらず下手で、演技...
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