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薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十八章 遊戯の果てに

クロードはスプリングの効いたベッドの上にバイオレッタを放り投げた。 寝台がぎしりと撓み、バイオレッタのほっそりとした肢体がシーツの海の上で勢いよく弾む。 その上にクロードが覆いかぶさってきた。 ……明るかった視界にたちまち影が差す。 同時に...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十九章 蝶の姫

『バイオレッタ』 混濁した意識の中、自分を呼ぶ声が聞こえる。『バイオレッタ。バイオレッタ、起きてちょうだい』 そうして何度か名前を呼ばれる。 バイオレッタは未だ覚醒しきらない霞がかった頭でぼんやりとその響きを聞いていた。(ああ、バイオレッタ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十章 魔導士との対峙

クロードはその朝、若干のけだるさとともに目を覚ました。 城へ向かう支度を整えながら息をつく。 あの後、アイリスによって逃されたバイオレッタを見つけることはとうとうできなかった。 背に流したままの黒髪を手で梳き下ろし、クロードは苛々と両目をつ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十一章 大空をゆく鳥のように

「――はあああああッ!!」 ピヴォワンヌは夢馬(ナイトメア)めがけて愛刀を打ち下ろした。 刹那、濃密な闇で生み出された黒馬のシルエットに亀裂が走り、音もなく消滅する。 息をついたのも束の間、足元に集った闇がまたしても不気味に蠢き出してピヴォ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十二章 王城への帰還

……ここは、どこだろう。 バイオレッタは静寂の下りた世界でぼんやりと考えた。 辺りには薄闇が垂れこめているものの、上空を見上げればほんのりと明るい光が射している。 もしかして、またあの闇の迷路の中へ放り出されてしまったのだろうか。 (だけど...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十三章 二輪の蘭

バイオレッタはぱちぱちと瞬きをした。 次いで、部屋の入口に仁王立ちしている少女を見つめる。 人の部屋にこうして勝手に上がり込んでくるなんて一体どういうつもりなのだろうか。 いや、それよりもこの少女は一体何者なのだろう……。 先日の一件で疲労...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十四章 移り変わるもの

――その夜、主人であるリシャールのもとへ引き立てられたクロードは、≪星の間≫で彼と向き合っていた。 左右を固めていた騎士たちが人払いを受けて退室し、今や広間にはクロードとリシャールの二人しか残っていない。 天窓の向こうはすでに濃い宵闇に支配...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十五章 公主の秘め事

「……あの子もいい加減あいつ(クロード)のことなんか忘れられればいいんでしょうけどね」 廊下に立ち尽くしていたピヴォワンヌはぼそりと言い、二人の後ろ姿がすっかり見えなくなったところでその場を離れた。 単身薔薇後宮に引き返すべく歩を進める。 ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二十六章 愛執の宴

クロードの生み出した『絵画の世界』から助け出され、薔薇後宮の自室に戻ってきてひと月ほどが経過した。 だが、バイオレッタは終始浮かない顔つきで毎日を過ごしていた。  ……その日、バイオレッタはドローイングルームのソファーの上で刺繍をしていた。...
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第二十七章 初めての恋が終わる時

「どういうことなのっ……!? さっきのあれは何!?」 オトンヌ宮での晩餐会を終えた後、ミュゲはクロードを秘密裏に庭園へ呼びつけ、声高に詰問した。「何、とは……?」「嘘つき!! お前は言ったわ……、わたくしを愛していると。女王になりさえすれば...
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