MENU

rose03seraglio

薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第三章 王城へ

荷造りにだいぶ時間がかかってしまい、しばらくクロードを部屋の外で待たせる羽目になった。 荷物持ちではないので時間などかかるはずもなかったのだが、大部屋の女優見習いたちに質問攻めにされてしまったのである。「あの方、王城の魔道士だって本当なの?...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第四章 初めての王宮

「……ルイーゼ?」「香緋!?」  ルイーゼはクロードの手を借りて箱馬車を降りると香緋に駆け寄った。 彼女は騎士に挟まれるようにして前庭にたたずんでいる。 (どうしてこの子が王城に……?) 「王都を見て回るって言っていたけれど……、もしかして...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第五章 鳥籠の囚人

女官らの催促によって、二人は王城に足を踏み入れた。 「……光と白亜の宮殿、リュミエール宮にございます」 (ここが……、国王陛下のおわすところ……?)  このリュミエール宮は数多ある宮殿群の中でも本城に当たる場所だという。リュミエール宮という...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第六章 筆頭侍女サラ

……早朝の執務室。 湯浴みを終えたクロードは、手早く着替えを始めた。 書斎には王の腹心としてやらなければならない仕事が山積みである。書類に目を通し、サインをし、午後からは魔導士館に赴いて仕事をする。今日も忙しくなりそうだ。 だが、せわしない...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第七章 侍女の語る「昔話」

湯浴みを終えたバイオレッタは、サラに支えられてこわごわ黄金の姿見の前に立った。 ここはバスルームから続いている一室で、大きな鏡がいたるところに置かれている場所だ。 壁紙の色は他の部屋と同じ深緑で、シャンデリアを彩る玻璃のビーズが時折陽の光を...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第八章 トワレット

……装飾品やショール、扇などの箱を手にした侍女が壁際に控えている。 バイオレッタは今、深緑に黄金の縁取りがされた大きな三面鏡の前に立っていた。  一息ついてからこの化粧室に入ると、侍女たちはすでに六着のドレスを用意していた。高価な染料で色鮮...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第九章 王と娘

「な……、何を言っているのよ!! 父さんが処刑ってどういうこと!?」  ピヴォワンヌは、思わずドレスの腰に手をやった。……そこにいつもの長剣の柄の感触はない。まるで最初からすべて仕組まれていたかのように。  菫青(アイオラ)棟の客間が侍女ら...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第十章 すれ違い

リシャールは、傲然とこちらに歩み寄ってくる。長靴の踵で断ち切られた帳を踏みしめ、濃紫のマントを引きながら、緋色の絨毯の上を進んでくる。 男の血がこびりついた長靴(ちょうか)は赤黒い色に染め上げられ、年若い姿の少年王からえもいわれぬ妖艶さを醸...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

間章 アガスターシェの大火

……その夜。 バイオレッタはなかなか寝付けずにいた。 日中《星の間》で凄惨な場面を目の当たりにしたせいだろうか、やけに意識が冴え冴えとしている。燭台の炎をすべて消してあるにも関わらず、睡魔がなかなか訪れてくれない。 サラが用意しておいてくれ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第一部 バイオレッタ編

第十一章 宴の夜に

バイオレッタは、朝食を取りながらため息をついた。(昨日の一件があってから、なんだか寝不足……) 口元に手を当てて大きなあくびをすると、バイオレッタは涙の滲んだ目元を擦る。  深更の一件は瞬く間に情報がもたらされ、「アガスターシェの大火」とい...
error: Content is protected !!
inserted by FC2 system