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薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

貴女への贈り物

「わぁっ! これ可愛いわ。見てよバイオレッタ」  ピヴォワンヌはそう言って、華奢な銀細工の指輪を持ち上げてみせた。小ぶりの花を連ねた意匠で、所々に色とりどりの宝石が嵌めこまれている。 「まあ、ジャルディネッティ・リングね。ルビー、サファイア...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

2018年に発表した短編のリメイク作品第二弾。クロードとバイオレッタの短いお話。     「姫……、姫?」  後宮書庫の一角で、クロードはソファーでうたた寝をしているバイオレッタを見つけて声をかけた。  ため息まじりに手を伸ばしかけて、やめ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

春の夢

「春の宵」をテーマに書き上げた短編です。主役はクロード×バイオレッタ。 気楽にお楽しみいただければ幸いです。    白木蓮の花の下、バイオレッタが思いを寄せる男はうっそりと笑った。 「……春の宵はとても儚い。金貨では到底贖(あがな)えないほ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

雨の日の記憶

クロードとミュゲの「過去」を描いた短編。本編と少しだけリンクしています。       「クロード、遅いわ! 置いていきますわよ!」  馬上のオルタンシアが声を張り上げる。  列の最後尾についたクロードは、息を切らしつつそれに応えた。 「お好...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

姫君たちのお茶会

「秋のお茶会」をテーマに書いた姫君たちの短編。2019年初出なため、時系列が本編と一致してませんが、お茶でも片手に気楽に読んでいただければ嬉しいです!      白亜の四阿(パビリオン)で、四人の姫はのんびりとお茶を愉しんでいた。    …...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

輝きの彼方へ

「夏」がテーマの短編です。主役はアスター×クララ(時々プリュンヌ)。 シリアスさの全くないほのぼのしたお話なのでのんびりお楽しみください。      後宮の人工池のほとりを、プリュンヌが駆けている。  彼女は四阿の中のアスターとクララに向け...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

冬の一日

「冬」をテーマにした季節の短編。なので時系列は本編と大幅にずれています。 書いてた時季が冬だったので、雪が出てきたりファー付きドレスが出てきたりします。 つかの間の冬気分に浸ってお楽しみいただければ幸いです。        国王執務室の奥―...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

ある夜の話

その夜、アベルはクロードとともにエテ宮の大広間である≪舞踏の間≫にたたずんでいた。  今日は彼と一緒に大広間の見回りをすることになっている。  とはいえ、実際に見回りをするのはアベルだけで、クロードはいわばそのお目付け役として彼の監視を任せ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

終わりの見えないラブ・ゲーム

第二部「第二十九章 無限廻廊リビドゥー」の後日譚になります。 夜のオトンヌ宮でクロードがバイオレッタに拒絶されたその翌日のお話です。 (本編を先にお読みいただくとよりわかりやすいかと思われます)     「ああ、姫……」  クロードは執務机...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 短編集

菖蒲と天竺牡丹

※物語中盤にやや性的な描写を含みます。軽度なものではありますが、苦手な方はご注意ください。      頬を撫でて行き過ぎる微風に、エヴラールは瞳を細めた。 (……全く。面倒なことになってしまった)  仲夏(ちゅうか)のある夜。  大臣たちの...
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