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薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第一章 青薔薇の罠

ずきずきと痛む頭を押さえ、バイオレッタは起き上がる。 なんだか不吉な夢を見ていたような気がする。「ん……。ここ……、ど、こ……」 のろのろと身を起こし、見慣れない景色に瞳を瞬く。……どこだろう、ここは。  まっさらなシーツが手に触れる。 そ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第二章 刹那の邂逅

華奢な王女の身体が、とさりと寝台に沈み込む。「ああ……!」 意識を失ったバイオレッタをしっかりと胸に抱き、クロードは感極まったようにささやきかけた。 「貴女をこうしてまたこの腕に抱く日が来ようとは……」 抱きしめるたびに温かい、柔らかいと思...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第三章 独りきりの夜明け

……その日、ピヴォワンヌは自らを取り巻く異様な空気にすぐさま気づいた。 もぞもぞと寝台の上で身を丸くした彼女は、ドローイングルームの方から聞こえてくる侍女たちの密談に耳を傾ける。 『一体どうなっているのかしら。後宮にいながらにして忽然と姿を...
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第四章 少年王の怒り

「一体何が起こっておるのだ、説明せよ!!」≪星の間≫に着くなり、一行は国王リシャールの甲高い怒鳴り声に出迎えられる羽目になった。 彼は玉座を覆う帳を勢いよくむしり取り、華奢な肩をめいっぱい怒らせて叫んだ。「この僕が知らぬとでも思ったのか!!...
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第五章 新たな風

ピヴォワンヌはとぼとぼと歩くプリュンヌの手を手繰り寄せると、離れることのないようにしっかりとつないだ。 小声でたしなめる。「もう。駄目じゃない、プリュンヌ。錯乱した人間相手に話しかけるなんて自殺行為だわ」「う……。ごめんなさい……、ピヴォワ...
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第六章 東国からの使者

「玉蘭っ……!? どうしてここに……!?」 狼狽するピヴォワンヌに、彼女は――玉蘭はほっとしたように笑った。「ああ、よかった……! よかった、香緋……、元気そうで……!」 ピヴォワンヌが振り返って真正面からその顔を覗き込むと、玉蘭はますます...
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第七章 昔馴染みとの再会

謁見式が終わり、一旦薔薇後宮に引き上げたピヴォワンヌは、早速玉蘭の居住棟に呼び出されていた。  紅玉棟のすぐそばにある館で、かつては仲のいい愛妾同士がまるで姉妹のように仲睦まじく生活していた場所だという。 公主二人がともに生活できるようにと...
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第八章 ヴァーテル教会からの客人

翌日、またしてもピヴォワンヌは突然の来客に叩き起こされる羽目になった。「ピヴォワンヌ様、起きてくださいませ」「うぅん……、なあに? ダフネ。まだ七時じゃないの……」 月に数回、王室女性たちが合同で朝の礼拝を行う日というのもあるが、今日は生憎...
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間章 騎士たちの夜

その日の夜。 リュミエール宮の貴賓室でくつろいでいたラズワルドのもとへ、隣室のスピネルがやってきた。「へえ、このお部屋も素敵ぃ」 薄手のネグリジェ姿でうきうきと部屋に入ってくるスピネルに、ラズワルドはうろたえた。「ちょっと、スピネル。いくら...
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第九章 赤と黒のアンタゴニズム

リュミエール宮の回廊を歩いていたクロードは、異臭に気づいて表情を険しくした。 この鼻につく匂いは、恐らく煙草だ。 見やれば、宮殿の石柱にもたれて煙管を咥える若い男の姿があった。別段悪びれる様子もなく悠々と紫煙を吐き出している。 男は回廊に囲...
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