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薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十章 公主たちとのひととき

一行は公主たちの住まいに足を踏み入れた。  ピヴォワンヌは、赤で統一された劉風の室内をきょろきょろ眺める。 (ここ、宮城にあった二人の部屋とそっくり。劉にいた頃の室内装飾をうまく再現してるわね)  あちこちに小型の吊り灯篭や房飾りが吊るされ...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十一章 “闇に覆い隠されし王女”  

その日、ピヴォワンヌとミュゲの二人は≪星の間≫へ呼び出され、女王選抜試験の一時中断を告げられた。  この状況下で試験を続行するのというのはもはや難しい話だろうというのが元老院の面々の意見だった。宰相も同じ意見らしく、彼は痛恨も露わに懸命に現...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十二章 追憶と淡き慕情

ピヴォワンヌはゆっくりと瞳を開けた。  頬や髪を撫でる温い微風が、穏やかに意識の覚醒を促す。 (ここは、どこなの?)  未だおぼろげな意識を叱咤し、ピヴォワンヌは自分が今どこにいるのかを確かめようとした。  さり、と音を立てて一歩を踏み出し...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十三章 ふたり

次の日の朝。  ピヴォワンヌは紅玉棟の私室で紙面を睨んでいた。  テーブルの上にはリシャールに借りた城の見取り図が広げてある。  その他にも王城やその周辺の区域に関する資料が山ほど並べられていた。  鵞ペンを置き、ピヴォワンヌはしかつめらし...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十四章 開かれる道

二人はそのまま北にある人工池のほとりまで歩いてみた。  石段を下り、石柱や彫像に囲まれる巨大な人工池を見渡す。 「こりゃまた随分と広い池だなァ。お、もう秋の花が咲いてやがるぜ」 「そうね。もう秋に入りかけてるから。この分じゃそのうちあそこの...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十五章 魔術痕跡を追って

ピヴォワンヌは急遽クララに従者二人を呼び出してくれるよう頼んだ。 「え? ユーグとアベルを……ですか?」 「ええ。あの二人にどうしてもお願いしたいことがあるんだけど、いい?」 「……それはもしかして、バイオレッタ様の捜索に関わることなのです...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十六章 出立の日に

「……なるほどね。そのバイオレッタ姫とやらを助けに行くために、彩月の力を借りたいと」  公主たちの部屋で話を切り出すと、玉蘭は真剣な面持ちでピヴォワンヌの言葉を反芻した。 「ええ。彩月の能力があれば、どんな敵相手でも切り抜けられるわ。だから...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

morendo 迫る終焉  

クロードは、リシャールから預かった書類を官僚の部屋へ運ぶべく国王執務室を出た。  廊下をまっすぐに進み、東の翼棟にある大臣の部屋を目指す。  クロードは眼鏡の奥の瞳を静かに閉じ、苛立たしげに眉間を指で押さえた。  いかにも成金といった風情の...
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間章Ⅱ 蠢く影

スピネルはリュミエール宮の貴賓室で大きな伸びをした。 「うーん、今日も絶好の仕事日和だわ!」  一人行儀よくテーブルについたラズワルドが、「朝から元気だね」とつぶやいてあくびを噛み殺す。  彼はスピネルに比べてやや遅めに起床し、今は身支度を...
薔薇後宮奇譚 ~菫の姫は千年の恋歌に啼く~ 第二部 ピヴォワンヌ編

第十七章 ぎやまんの檻

――話はピヴォワンヌが王宮を出立する数日前にさかのぼる。    バイオレッタはその日、クロードに連れられて彼の邸宅にある温室へと足を踏み入れていた。  彼の選んだ真っ白なシルクのシュミーズドレスを着せられ、人形のそれのように繊細なリボン使い...
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